【レビュー】『Loretta(ロレッタ)』プレイヤーが主人公の共犯者となるサイコスリラー。何をしでかすか分からない彼女にハラハラ
オイオイと声が出る凶行
歯車は突如狂い始める……いや、既に狂っていた。
1940年代のアメリカの田舎を舞台にしたサイコスリラー『Loretta(ロレッタ)』。2023年2月にPC版が発売、2024年4月には家庭用ゲーム機版も展開されPC以外のプラットフォームでも遊べるようになった。
物語の中心となるのは、ニューヨークの街から古い農場へと引っ越した主婦・ロレッタ。夫のウォルターは作家をしているが仕事はうまくいかず、生活も経済的に見ると厳しいものだ。家も古いせいかガタがきている。過去の流産などで子どもにも恵まれず、夫婦の関係は不穏な方向へ……
農場にある古ぼけた井戸、夫の不貞、今の環境から解放されたいロレッタ、夫にかけられた3万ドルの保険金。さまざまな舞台装置が揃ったいま、彼女は凶行に走る。
ロレッタがしたことはひとつのはじまりにすぎず、このゲームの核となるはプレイヤーが目撃者になってしまったこと。さらに、ロレッタを操作するのは自分なので、同時に彼女の共犯者でもある。やってはいけないことをしてしまった彼女はどうなってしまうのか、それを見届けるのがプレイヤーの役割だ。
イベントシーンには数々の選択肢が展開され、選んだものによって物語が分岐していくマルチエンディング方式となる。うまく事が進むようにその場に適した選択肢を選べばいいように思えるが、ロレッタはそうはいかない。隙あらばとんでもないことをやろうとするし、話は「ゲーッ!」と言いたくなるような方向に転がっていってしまう。違う選択を選んだらどうなるのか……恐ろしくもありちょっとおもしろかった。
もちろん、『Loretta』の物語はコメディではないので、物騒な話100%でお送りする。筆者の場合、最後までロレッタと気持ちがシンクロすることはなかった。だって、彼女は自分が想像していた2手先を行くのだから。他の人の反応を見てみたくなるゲームだ。
『Loretta』はなぜこうも不気味で、ハラハラしてしまうのか。その理由は“音”にあるのではないだろうか。
ロレッタはいまの環境にウンザリしており、その様子は劇中のモノローグに現れている。ボロっちい自宅への印象、頭を刺すような時計のチクタク音、自身の心情を代弁するかのような大嵐、あらゆるシーンでイヤな“音”がさりげなく主張してくる。
彼女にとって、いまの生活すべてにノイズがかかっているのか? そう思わせるような音響効果がこの作品の不気味さをうまく作っていると感じた。
筆者がゲームを遊ぶときは基本スピーカーから音を出しているのだが、『Loretta』はイヤホンかヘッドホンを使ってプレイしたほうがその感触は伝わりやすいだろう。
『Loretta(ロレッタ)』の物語は凄惨で、内容は遊ぶタイミングや人を選ぶ作品だ。それでも彼女には「次はどうするんだ……!」と色んな意味で引き込むパワーがある。煽るようにハラハラさせる展開は立て続けに味わうとおなかいっぱいになってしまうけど、久しぶりに触れると刺激的でのめり込んでしまうな……。
- 商品名 Loretta(ロレッタ)
- 開発 Yakov Butuzoff
- 販売 DANGEN Entertainment
- 配信日 2023年2月16日(PC)、2024年4月11日(PS5、Xbox One、Xbox Series X|S、Switch)
- 定価 1700円(Steam)、1,460円(Epic Games Store)1,650円(PS5、Switch)1,750円(Xbox)、14.99ドル(GOG.com)
- 日本語 〇