INDIE GAMES JOURNAL(インディーゲームジャーナル)

ただ怖いだけじゃない“ノスタルジックホラー”、『もういいかい?』で懐かしさと怖さに震える夏

by 大塚 角満

1990年代の風景の中で

 暑い夏は背筋から寒くなれるホラーコンテンツの稼ぎ時なわけだが、それはゲーム業界にも言えて、この時期にリリースされる“恐怖”をテーマにした作品は少なくない。

 今回紹介する『もういいかい?』もSteamで配信開始となったのは2024年7月31日だから、タイミング的にはまさに「ベスト!」という感じだった。

 筆者は幼少期からオカルトに目がなく、古巣のファミ通時代にもゲームとまったく関係ない心霊スポット巡りの記事を何度も書いて当時の編集長の背筋を凍らせたりしていた。夏の時期にホラーゲームの特集記事を企画した回数は数知れず。いまでもゲームのネットショップを開くと、条件反射的に「新規の怖いのないかな……」と“その手の”コンテンツを探してしまう。そんな筆者が最近出会ったのが、前述の『もういいかい?』だったのである。

 Steamの商品紹介ページに書かれている説明によるとこのゲームは、

 「『もういいかい?』は360°主観探索型、パノラマ・ホラー・アドベンチャーゲーム。 舞台は1990年代日本の地方都市。誰もいない町に迷い込んだ小学生のあなたは、果たして自分の家に帰ることができるだろうか……」

 というもので、要するに迷い込んでしまった1990年代の街を彷徨いながら観察と調査をくり返し、家に帰ることを目指す……という謎解きゲームである。

 つまり、事細かに内容を書いてしまうと思いっきりネタバレ(つまり一部の答え)になる可能性が高いため、紹介するにも慎重を期さないといけない。なので、奥歯に物が挟まったかのような中途半端な表現に終始するかもしれないが、そういう部分が気になってしまった方もぜひ遊んでもらいたいゲームになっていることを、先に記しておきます。

 くり返しになるが『もういいかい?』は、懐かしの1990年代の地方都市を舞台にしたパノラマ・ホラーアドベンチャーゲームだ。この“パノラマ”ってのが気になる人がいるかと思うけど、ゲームの進行が↓このように、

 独特なテイストで表現されたノスタルジックな風景の中をグルグルと360度にわたって見回しながら、気になる箇所を見たり、調べたりすることが中心だからだ。テレビの砂嵐がかかったかのようなセピア色の世界は不気味かつ郷愁を呼び起こすもので、まさに1990年代に青春を過ごしていた筆者などは、この空間にいるだけで故郷に帰ったかのような気持ちになっちゃったよ……。

 しかし、ここはホラーゲームの世界。さまざまな要素が複雑に絡み合ったシナリオを進めていくと、要所要所で……!!

 なんとも気味の悪い事象にぶつかるんだよなぁ……!!(((( ;゚Д゚)))

 ジャンプスケア(※急な音や映像で視聴者を飛び上がらせる、お約束の手法のこと)な表現ではなく、もっとこう……じっとりと手のひらに汗が浮かぶような、イヤな感じの怖さが散りばめられている感じ……。これが、かすかな記憶の向こうにある1990年代の世界と相俟って、じつにいい感じに恐怖心を喚起してくれるのだ。

 ただ怖いだけじゃない、絶妙にプレイヤーの心に訴えかけてくるストーリーをぜひとも堪能してもらいたい。そしてその先にある3つのエンディングを味わってもらえれば……!

 筆者もまだすべての要素を見たわけではないので、これを書き終わったら再び、1990年代の“あのころ”に戻りたいと思う。

 ストーリー重視の、ほかとはちょっと違う“ノスタルジック・ホラー”に興味がある方は、ぜひ手に取ってみてください。

  • 商品名 もういいかい?
  • 開発  URUTA KOBITO GAMES
  • 販売  URUTA KOBITO GAMES
  • 配信日 2024年8月1日
  • 日本語 〇

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