INDIE GAMES JOURNAL(インディーゲームジャーナル)

【レビュー】1999年に遡って悪質すぎるインストーラーからパソコンを守るゲーム『マルウェア』。余計なソフトがなぜかインストールされる恐怖体験をもう一度

by 富士脇 水面

2024.12.19 21:55 | 更新

 読者諸君は「便利ツールとして紹介されていたソフトをインストールしてみたら、便利ツールだけじゃなく余計なソフトもインストールされてしまった」みたいなインターネットの苦い経験はあるかな?

 私はある。というか、2010年代前半くらいまでにインターネットに浸かっていたユーザーなら、みんな多かれ少なかれ同じような経験をしたんじゃないかと思う。

 便利そうなソフトをインストールしてみたら、なぜか別のソフトがインストールされたとか、ブラウザによくわからないツールバーが増えたとか、ブラウザのスタートページが知らないサイトになったとか。

 今だったらインストーラーに書いてあることをよく読めばいいで済む話なんだけど、そのレベルの基礎知識すらなくて抱き合わせの罠にまんまとハマったんだよね。

 なんでこんな思い出話をしたかっていうと、今回紹介するのがそんなかつての悪夢をもう一度体験できるゲームだから。

懐かし要素満載のシンプルゲーム

 今回紹介するのはインストールオプションを巧妙に隠し、不要なソフトウェアも一緒にインストールしようとする悪質なインストーラーをテーマとしたポイント&クリック式のシミュレーションゲーム『マルウェア』。

 懐かしくも輝かしい20世紀末、インターネットが急速に普及する1999年にタイムトラベルし、悪徳ソフトウェアベンダーに悩まされるネット民の依頼を受けて、悪質インストーラーの対応策を調査するというのが本作の概要だ。

 ゲームシステムは非常にシンプルで、不要なソフトウェアや悪意のあるソフトウェアが抱き合わせでインストールされてしまうインストーラーの調査を受けて確認。

 インストーラーを起動し、目当てのソフトウェアだけをインストールする手段を見つけたら依頼達成で報酬を得るという、いわゆる経営シムのような内容となっている。

 さて、本来であればこのまま実際のプレイの様子をご紹介したいところだが、ゲームの性質上ネタバレがプレイ体験に大きな影響を与えるため、プレイの詳細については後程紹介させていただく。

 本作は謎解きパズル、あるいは間違い探しに近いゲーム性なのだが、視覚情報と操作感から得られる独特の雰囲気が特徴的で、細部までかなりのこだわりが感じられたのが印象的だった。

 例えばゲームを起動するとまず現れるのはOuthook Expressというメールソフトの画面。

 これはかつてMicrosoftが提供していたメールソフトOutlook Expressを再現したもので、PCでの電子メールに触れていたユーザには懐かしく、Lineのようなメッセージアプリが身近にあった若い世代にはむしろ新鮮な画面といえるだろう。

 受信トレイには依頼者などからのメールが並び、返信を意味する「Re:」が連なって付加されているのも懐かしい光景。最近の電子メールだと返信がツリー方式になっていたり、複数回の返信でも連ならないようになってるのでゲーム内での思わぬ再会に「あったわこんなん」と笑ってしまった。

 ヘッダーのボタン類も一部は使用可能で、既読メールを一括でゴミ箱に入れたり、ゴミ箱から受信トレイに回復できるようになっている。経営シムではメッセージの削除・回復機能はよくあるものといえばそうなのだが、見た目の再現度が高いからこそ、この機能も「おぉ!」と妙な驚きがあった。

 本作のメイン要素であるインストーラーの確認フェーズでもこだわりを感じる要素が多く、まず驚いたのは受信トレイに届いた依頼者からのメールに添付されたインストーラーをクリックしたら、一度メールソフトが閉じられてからインストーラーが起動したこと。

 インストール中も古い時代のPCらしくプログレスバーが何度も止まるこだわりっぷり。SSDが手に取りやすい価格になる前はインストールとかアップデートとか、ゲーム起動も今より少しゆっくりだったよね。

 っと、まぁこんな感じで細部に懐かしのギミックが仕込まれている本作。90年代生まれの筆者でもこれだけ懐かし要素を楽しめるのだから、実際にこの時期のインターネットを体験していた世代ならもっと楽しめるんじゃないだろうか。

90年代ってこんなに恐ろしい時代だったの?

 そろそろ『マルウェア』のメイン要素の紹介に移ろうと思うのだが、本作は複数のオプションが用意されたインストーラーから、不要なソフトウェアインストールするオプションを省くという謎解きパズルのようなゲーム性となっている。

 そのため、本来であればネタバレは極力避けたいところ。しかしながら、作品紹介のため序盤のもではあるものの一部のギミックを明かすことをご容赦いただきたい。

 ここまでの紹介で興味を持ったからネタバレを避けたいという方は、ぜひ今すぐストアページに進んでほしい。

 さて、1999年に時を遡りマルウェアや不要なソフトウェアもインストールしようとする悪質なインストーラーと格闘する『マルウェア』ゲーム本編の様子を見ていこう。

 前述したとおり、依頼者からのメールに添付されたインストーラーをクリックするとインストーラーの確認作業が開始となる。

 この確認作業の手順は基本的には我々が現実で行っているものと変わらない。立ち上がったインストーラーを次へ次へと進め、利用規約に同意してインストールするだけ。

 ただし、適当に読み進めて次へ次へと進むと……。

 「マルウェアがインストールされました」と、余計なソフトウェアもインストールされてしまう。

 余計なソフトウェアは悪徳ソフトウェアベンダーが巧妙に仕込んだオプションを切り忘れたことが原因なので、文章をよく読んでマルウェアをインストールさせなければお題クリア。というのがゲームの流れなのだが……。

 文章をよく読んでいれば回避できるはずなのだが! まぁ~~~上手くオプションが隠されていて本当に悪質。

 「○○を使用する」みたいなチェックボックスがあればわかりやすいのだけれど、序盤から「○○のインストールをキャンセル」とか「後で○○しない」みたいなひっかけも当たり前に出てくる。

 ゲームが進むとかなり巧妙な罠も仕掛けられていて、ほぼ脳トレ。

 現実より悪質なインストーラーがどんどん出てきて、筆者が実際にプレイしてみたときは、わからなすぎて1日寝かしたお題もあったくらいだ。

 まぁ、私の頭がカチカチで詰まったというのはそうかもしれないけど、謎解きパズルみたいなゲームが好きな人も結構楽しめる内容なんじゃないかと思う。

 不要なソフトウェアをインストールさせる巧妙な手口を紐解くポイント&クリック式シミュレーションゲーム『マルウェア』は、Steamにて350円で発売中。

 輝かしく発展する1990年代のインターネットの日常だった悪質インストーラーとの戦いを振り返ってみたい方はぜひ手に取ってみてほしい。

  • 商品名  マルウェア
  • 開発   Odd Games
  • 販売   Odd Games
  • 配信日  2024年8月1日
  • 定価   ¥ 350
  • 日本語  〇

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