INDIE GAMES JOURNAL(インディーゲームジャーナル)

【レビュー】サウナの熱波でゾンビや悪魔を整える『Sauna of the DEAD』。地獄にもサウナブームが来たらしい

by 友野 辰貴

2024.8.1 14:46 | 更新

地獄×サウナ……なぜ?

 日本にもたびたび来てはSNSなどで話題を呼ぶサウナブーム。高温のサウナ室で発汗を促し、水風呂でクールダウン、外気浴での休憩のサイクルでスッキリするいわゆる“整い”体験が、世の人々を虜にした。

 そんなサウナブームが地球上のみならず、とうとう地獄にも来たらしい。PC(Steam)向けゲーム『Sauna of the DEAD』では、地獄のサウナで熱波師として働くという……

 が、ストアページを見た瞬間、筆者の頭には「面白そう!」よりも「地獄? サウナ? 熱波師? なぜ?」という困惑の方が強かった。パッと見た感じは2022年に大流行したローグライクゲーム『Vampire Survivors』っぽい見下ろし方のドット絵2Dアクション風だが、なにせ「熱風をぶつけて昇天させろ」だの、「魔王との対決を目指せ」だの気になるワードが多い。

 確かにサウナの熱風は体感温度100度を超えるらしいし、ロウリュウ(熱い石に水をかけ、水蒸気を発生させてサウナの温度を上げること)のし過ぎは危険というが、それでゾンビや悪魔って倒せるの?

 そんなストアページの謎を解明すべく、筆者は『Sauna of the DEAD』の奥地へ向かうことにした。

シンプルだけどちょいムズイ

 ゲーム性は上でも書いた通り、シンプルな見下ろし方の2Dアクション。サウナ室に入っては、熱風を敵(というかお客さんではある)にぶつけて昇天させ、就業時間まで生き残ることを目指しつつ、各ステージのボスも倒していく。昇天(という名の撃破)させればさせるだけスコアが上昇。装備アイテムを購入できるお金、レベルアップできる経験値も倒せば倒すほどもらえるなど、RPG要素も特徴だ。

 いざ職場(銭湯)に向かってみると、お風呂で日々の疲れを癒すゾンビたちの姿が。脱衣所で談笑したり、湯に溶けたり、休憩スペースで寝ちゃっていたりと、人間と変わらない様子。

 全然やさしく話しかけてくれる。ゾンビなのに……。というか人間(?)味を感じるゾンビでツッコむの忘れてたけど、地獄の銭湯って日本と同じなんだなぁ……。

 少々戸惑ったが、大事なのはアクション。タオルで熱風を送る通常攻撃&全体攻撃、移動、回避、特殊アクション(ロウリュウ、薪入れ)だけの、非常にシンプルな操作感のようだ。「なんだ簡単じゃん。要するに迫ってくる敵に熱風を送ればいいんでしょ」と思い、いざサウナ室に向かってみると……

 即死した。敵が強いのか、主人公が弱いのかはわからないが、とにかくすぐに死ぬ。最初はほぼ近接攻撃しかしないゾンビだけのステージだが、気を抜けばすぐ囲まれて絶体絶命のピンチに陥る。はっきり言って囲まれたらもう終わりだ。

  油断しただけだ。落ち着いてもう一度挑戦……。サウナに入る→ゾンビに攻撃する→少しずつ倒す→どんどん敵が増える→押されてくる→囲まれる→死ぬ。なんで?

 完璧じゃないにしても操作はそこそこよかったはず……。最初のステージにも関わらず突破口も見つからないとは。正直舐めていたがここで「あれ? 難易度高くねえか!!」と完全に意識が切り替わった。

 (自称)アクション得意な筆者が即死するこの絶妙な難易度を演出しているのは、“スタミナ”の概念。攻撃にも回避にも消費し、2、3回なにかしら連発すればすぐ枯渇する。管理がかなり大変だ。使い切ると数秒ほど動けなくなる点もキツイ。「ヤバい! 回避か攻撃しないと死ぬ!」と思ったときにはスタミナはもうない→動けない→死ぬなんてことが多々あった。

 しかも死ぬとお金を奪われる。いい装備が欲しいのに収入が削られてより勝利が遠ざかる。歯がゆい思いもさせられる。もう本気の台パンが出る寸前だった……。

 が、ここで番頭さんからアドバイス。どうやら「フィーバータイム」なるものがあるらしい。敵を倒し続けたりロウリュウ・薪入れをしたりすることで、サウナ室の温度が上昇。一定の温度を超えるとフィーバータイムに突入し、フィーバー中はスタミナ消費がなくなるらしい。

 これはありがたい。かなり頭を悩ませていたスタミナ問題がかなり解消されるうえに敵も倒し放題。スタミナ消費が多めの範囲攻撃を連発して、敵を一気に倒せるのもかなりグッドだ。ただ番頭さん、もっと早く言ってほしかったなぁ。

 また、“整い”で自身にバフ(付加効果)を乗せるシステムもあり、このおかげで戦闘も楽に。敵を倒して多種多様な“トトノイ玉”をゲット。水風呂に入り、休憩すると持っているトトノイ玉の分だけ攻撃力・スタミナなどのステータスが上昇する。

 「就業時間中に整っちゃって大丈夫なの?」という疑問はあるが、そんなの知ったこっちゃない。だいたい“整い”の手伝いをしているのに襲ってくる客側が悪いのだ。

 フィーバータイムと整い、立ち回りを覚えれば本作の要点はほぼつかんだようなもの。立ち回り一辺倒だった筆者のゲームプレイをかなり助けてくれた。それでも全然死んでしまうのだが……。

 しかし、トライ&エラーを繰り返していくと、倒しながら逃げられる“捌ける距離感”がつかめるように。気が付けばぎりぎりで上手く捌けるようになっていると実感した。敵を倒せるようになれば、お金もたくさん手に入り、いい装備がゲットできる。装備パワー&慣れで敵を一網打尽にするという好循環にハマるのだ。

 そうなればあとはこっちのもの。数多くの敵が迫っているのに、それをものともせず上手く倒していくときは全能感が身体を支配。大群をかいくぐりながらボスを攻撃し、倒せたときにはかなり爽快だった。

 なお、ステージによって敵の特性は変化する。立ち回りも必然と変わってくるため、慣れたと思っても次のステージで瞬殺されてしまうのだが、個人的には味変みたいで結構好み。毒を撒いたり、火球を放ってきたり、突進してきたり。各ステージで全く異なる立ち回りを求められるが、そのたびに慣れ→トライ&エラー→ボス攻略の達成感を味わえる。この辺りはソウルライクに似たものがあるかもしれない。

 というかストレスを溜めて溜めて最後にスッキリさせるって、これ実質サウナじゃん。

  • 商品名 Sauna of the DEAD
  • 開発  Finger tip
  • 販売  Finger tip
  • 配信日 2024年6月20日
  • 定価  980円(Steam)
  • 日本語 〇

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