【レビュー】『未解決事件は終わらせないといけないから』児童行方不明の謎は会話の中にある。ぼんやりとしたピースに潜む“違和感”
あの子はなぜいなくなったのか?
2012年2月5日、公園で遊んでいた女の子が行方不明になった。
女の子の名前は犀華ちゃん。警察は捜索や聞き込みを続けたが解決せず、未解決事件として扱われている。
当時事件に関わっていた清崎蒼警部は既に退職。そこから時は流れ、12年経ったある日、若い警官が彼女を尋ねてきた。
未解決となっている“犀華ちゃん行方不明事件”を終わらせるため、警官は清崎に協力を要請。清崎は当時の記憶を呼び起こし、断片となった思い出をプレイヤーとともに繋ぎ合わせていく……。それがこの推理ゲーム『未解決事件は終わらせないといけないから』の目的である。
画面上に広がるのはメッセージアプリのような会話の記録。清崎は誰と、いつ、何を喋っていたのか、バラバラになっている会話のピースを時系列順に繋ぎながら事件の謎を追っていく。
たぶんこれは事件発覚時の話だろうなぁ……
あぁ、こっちは聞き込みの時かな?
最初に確認できる陳述は限られており、読み進めていくとある違和感が生まれた。しゃべっている内容が何かおかしい、まるで違う人が話しているような……。
そう、あくまで当時の思い出を探っているだけで、発言者もハッキリしていないのだ。記憶というものは曖昧なもので、現実でも昔聞いた話題がぼんやりしていたり、教えてくれたのはAさんではなくBさんだったという勘違いを体験したことはないだろうか。いまの清崎の頭の中は、ひっくり返したパズル盤。ぐちゃぐちゃになった頭の中をひとつづつキレイに整えなければならない。最初は普通の推理ゲームかなと思っていたけれど、これは一筋縄ではいかないなと途中から楽しくなってきた。
面白いシーンはあるものの、序盤の進行は正直パンチの弱さを感じていた。が、事件の流れを整理してはじめて気づく違和感。
うまく言えないがどこかおかしいんじゃないか。
このやりとりはなんだ……。
頭の中をチリチリ刺すような“何か”を抱えたまま、その違和感がやがて確信へと変わる。謎が分かったときの肌が一気にピリついたような感覚。謎解きの表現でよく見る「パズルのピースがハマった瞬間」とはこういうことだったのか……と大きく頷いた。
プレイヤーは話の全体像がよくわからないままゲームをはじめ、フワフワした情報収集を続けながら、やがてそれはひとつの“真実”として形になる。あのときの“モヤモヤ”が後から「そういうことだったのか!!」とスッキリ回収していく様は読んでいてグッと引き込まれてしまった。どうして記憶を思い出さないといけないのか、『未解決事件は終わらせないといけないから』はその過程を追うワクワク感がおもしろい作品だと思う。タイトルに込められた思い、そしてすべてを知ったあとに改めて物語を振り返ると、また新たな印象が生まれるだろう。
- 商品名 未解決事件は終わらせないといけないから
- 開発 Somi
- 販売 Somi
- 配信日 2024年1月18日
- 定価 800円(Steam)
- 日本語 〇