INDIE GAMES JOURNAL(インディーゲームジャーナル)

【レビュー】無数のパターンが存在するコイを組み合わせて理想のコイ集め! 癒し系放置シミュレーション『Koi Farm』を知ってほしい

by 富士脇 水面

 私が初めてこの作品を見たとき、頭に浮かんだのは「なんだこのゲームは?」という困惑のそれだった。

 4月末のこと、友人と不定期に行っている「駄弁りながらSteamを探索しようの会」の最中だった私たちは、そのタイミングで開かれていた「農場フェス」に並ぶ目を引くサムネイルに吸い寄せられた。

 コイが泳ぐ池を背景に“コイ ファーム”とだけ書かれたそのサムネイルをクリックしてみると、ストアページにあったのは「鯉の繁殖ゲーム」という驚くほどシンプルな説明と池を泳ぐコイの姿だけ。

 友人とともにページをスクロールしてみると、どうやらコイの品種改良を繰り返して図鑑を埋めるゲームらしく、「世の中にはいろいろなゲームがあるもんだ」とその日はウィッシュリストに放り込んで終わったのだが……。

 後日『Koi Farm』を購入した友人が310円のゲームとは思えないほど遊べると大喜びで戻ってきた。

 聞けば柄・色・大きさ・ヒレの形まで、とにかくコイのパターンが豊富で、図鑑を埋めるだけでも結構なボリューム。好みの柄に整えようとするとかなり遊べるのだという。

 片手間に遊べる放置ゲーだというので私もその場で購入。いざ遊んでみると、なるほどこれはスルメゲーの予感……!

 このゲームの流れは非常にシンプルで、

  • 川を泳いでいるコイを小さな池に2匹投げ込む
  • 少し待つと子供が生まれるので大きな池に移す
  • 1分ほど待って子供が成長したら、次の繁殖を行う
  • 数世代の品種改良を重ねて図鑑指定の模様に仕上げる
  • 指定された図鑑が埋まると新たな図鑑が開くのでこれを繰り返す

と、まぁタイトルやストアページから得られる情報以上のことはないのだが、前情報通り本当にコイのパターンが多く、“自分で調整している感“がなかなかにおもしろい。

 図鑑が指定してくるのは模様のない単色のコイから、2色3色の模様をもったコイなどさまざまで、序盤の丸模様を持った2色のコイなんかは単色のコイを数回繁殖させれば1匹くらいは見つけられるのだが、ページが進むとそう簡単にはいかない。

 例えば2ページ目のオレンジ単色のコイ、

 こいつは基本的に黄色のコイを掛け合わせた時の突然変異でしか生まれてこない序盤では比較的レアな個体。

 運が良ければ手前の黄色と白の丸模様を作っている間に生まれてくるが、そうでなればひたすら黄×黄などの組み合わせでひたすら繁殖を続けることになる。

 ちなみに私は運が悪くて30回くらいやったうえに2色の模様が出たので、単色を出すための繁殖が必要だったのでまぁまぁ大変だった。

 品種改良らしい作業としては模様の調整も法則性を発見するのが楽しく、

 こういった縦縞のコイがどのように生まれるのか、繁殖を繰り返してパターンを見つけたときにはちょっとした達成感を感じたものだ。

 さて、図鑑埋めは間違いなく本作のメインコンテンツ。だが、個人的にはやはり本編といえるのは図鑑埋めが終わった後の自由時間。

 先にも軽く触れたがコイは模様以外にもパターンがあり、重さ・長さ・ひれの形状と品種改良の幅はかなりのもので、完璧な個体を生み出そうとすると何世代もの改良が必要になる。

例えばコイのサイズを大きくするためには、片っ端からコイをカードに変えてサイズを確認し、一番大きなコイを見つけて何度か繁殖。

 生まれてきた子供たちが成長しきるまで1時間待機し、親よりも大きな個体がいなければ同じ親でまた繁殖。親を上回るサイズの個体がいたら、その個体で次の世代を繁殖。と、この作業をひたすら繰り返すのだ。

 理想的なコイを完成させるには何世代もの品種改良が必要で、恐ろしく地味な作業だが、コツコツ作業を進めるゲームが好きな人には結構楽しい作品なんじゃないかと思う。

私自身もそういったゲームが好きなタイプなので、既に図鑑埋め後の品種改良だけでも数十時間を費やしているのだが、片手間で遊べるというのもおすすめのポイント。

 というのも『Koi Farm』はウィンドウのサイズに合わせてレイアウトも調整されるので、画面の端っこだったり、私のようにサブモニターが縦置きのユーザーでも問題なく遊べる。

 水音や草の音、鳥の鳴き声、雨に雷といった環境音も心地よく、常に画面を見ておかなければいけないゲームではないので、ほかのゲームや作業の横にあっても邪魔にならないのだ。

 ちなみに、これまでの説明から本作が一人でコツコツ遊ぶゲームであることは理解していただけただろうが、おまけ的にコイのシェア機能も実装されている。

 『Koi Farm』ではコイを重量・大きさ・年齢が確認できるカードに保存し、図鑑に登録していくが、このカードは画像ファイルとして保存でき、

 画像をゲームにドラッグ&ドロップするとゲーム内にそのコイが現れるので、他のプレイヤーと自慢のコイをトレードするような遊び方ができるのだ。

 というわけで、最後に品種改良中に見つけた私のお気に入りのコイを1匹配って今回は締めさせていただこう。

 Steamにて310円で発売中の『Koi Farm』は、低価格ながらじっくり遊べるカジュアルなコイ育成シミュレーションゲーム。色や模様、サイズにヒレの形状など非常に幅広いパターンの中から、理想のコイを見つけだす長い長い品種改良に挑んでみてほしい。

  • 商品名 Koi Farm
  • 開発  Job Talle, 3xBlast
  • 配信日 2021年2月26日
  • 定価  ¥ 310
  • 日本語 〇

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