INDIE GAMES JOURNAL(インディーゲームジャーナル)

【レビュー】反響する音、ゆらめく水……。“ただプールを彷徨うだけ”なのに怖い、“ソフトホラー”の探索ゲーム『POOLS』を知ってほしい!

by 大塚 角満

全身が耳になる不思議なゲーム

 昨年11月にSteamに登場し、ゲーム業界の話題をかっさらったウォーキングシミュレーターの秀作『8番出口』のヒット以来、インディーゲームの世界では“ただ彷徨うだけ”なタイトルがブームになっている。

 リアルに描写されたプレイフィールドをひたすら歩きまくり、かすかな異変、変調、違和感を感じ取って、その世界からの脱出を試みる……という、“インタラクティブ短編小説”とも言えるゲーム性が、世のゲームファンに刺さりまくっているのだ。

 しかし、正直に言うと筆者はこの波に乗り遅れてしまい、『8番出口』も買ったきり未プレイのまま……。まわりのインディーゲームマニアたちから、「めっちゃよかったっすよ!」、「早く遊ばないと!!」なんて言われるたびにイジケてしまい、いまだソフトを起動していないのである。こういった不気味な雰囲気なジャンル、大好きなくせに。

 ……なんてことをしているうちに時が流れ、気が付けば2024年も6月に。その日もいつものように、本格的な原稿仕事に入る前にSteamの巡回を始めたんだけど……!

 「……あれ? なんだこのゲーム……」

 パッと見、環境映像系のソフトかと思ってスルーしそうになったんだけど、表示されているスクショがやたらとリアルで、それが逆に……。

 「……ちょっと怖くね? この雰囲気……」

 そこはかとなく放たれていた奇妙な気配に背中を押されて、思わずポチっと詳細ページを開いてしまったのが……!

 2024年4月26日にリリースされたSteam用ソフトホラー探索ゲーム『POOLS』との出会いだった。

 『POOLS』は誤解を恐れずに言えば、8番出口ライクな探索アドベンチャーゲーム……と言える(『8番出口』未プレイだけど^^;)。ゲームの説明には以下の通り記されているんだけど、

 「実験的な穏やかなホラーと探索のゲーム。 勝ち負けの問題ではありません。 ゲームは歩き回ったり、周りを見回したり、音を聞いたりすることです。 モンスターがあなたを追いかけたり、画面に向かって飛びついたりすることはありません。 このゲームは、道に迷うこと、暗くて狭い空間への恐怖を呼び起します」

 もう、これだけですべてが語られていると言っても過言ではない。やることは究極的にシンプルで、ひたすら迷路になっているプールを彷徨うだけなのである。

 よって、『POOLS』にはユーザーインターフェースも、BGMも存在しない。できるのは歩く操作と(プールにいるけど泳ぐわけではない)、場所によって変わるサウンド、環境音に耳を澄ますだけだ。

 懇切丁寧なチュートリアルもなく、ゲームを始めるといきなり誰もいないプールに投げ出されるので、戸惑うことは間違いない。

 でも、ただ突っ立っていても始まらないので、道の続く限り歩いて周囲を観察していく。

 すると、耳に届く足音や水音が、かすかに変化するのを察せるはず……。

 何もないときは、静かにヒタヒタと。

 プールから上がって歩き出すと、足裏の水が床に触れてピシヤピシャという軽薄な音に変わっていく。

 そしてまわりの風景も、あてどなく歩いているうちに刻々と変わっていって、ところどころに奇妙なオブジェや置物があることに気付くはずだ。

 全身を目と耳にしながら、閉鎖された水の空間の奥へと進んでいく。

 敵も、モンスターも、殺人鬼もいないのに、心臓を潰されるような微妙な恐怖が脳を支配してくる。

 怖くないはずなのに、ヘンな汗をかいている。これは緊張……? それとも……恐怖を覚え始めているのか??

 自分の気持ちにすら自身が持てなくなってくる、“何もない空間”の圧迫感。

 全6章の探索は、それぞれ10~30分のプレイに収まっている。

 じつは筆者、まだ途中なんだけど、いち早くこのゲームをお知らせしたくて筆を執った次第だ。やたらと暑い夏の季節にピッタリな、“プール×ソフトホラー”のこのタイトルで、ちょっとヒヤっとしていただきたいと思いました!

  • 商品名  POOLS
  • 開発   Tensori
  • 販売   Tensori, UNIKAT Labe
  • 配信日  2024年4月26日
  • 定価   1,250円(Steam)
  • 日本語  〇

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