INDIE GAMES JOURNAL(インディーゲームジャーナル)

【インタビュー】落とす対象は“陰キャ”のみ! それでも純な恋愛ノベルゲー!? 話題の『陰キャラブコメ』の作者、“じょせふ”さんに『陰ラブ』のすべてを聞いた!

by 大塚 角満

特異な世界観の秘密に迫る

 2022年10月23日にBOOTHでリリースされたPC用ソフトが、ゲーム業界を静かにザワつかせた。

 ……いや、“静かにザワつかせた”という表現自体が矛盾しているので、これをお読みの方もポカンとしてしまったかもしれないが、このゲームについて語る上では、こういった突拍子のない表現こそ似つかわしいと思うのである。

 そのゲームのタイトルは『陰キャラブコメ』。

 インディーゲームクリエイターの“じょせふ”さんが放った、“恋愛風ノベルゲーム”である。

 ノベルゲームはインディーゲーム業界ではかなり成熟したジャンルで、リリース本数も、ヒット作も多い。そんな中、「ゲームを完成させたのは、これが初めてです!」と話すじょせふさんの『陰キャラブコメ』は、なぜここまで注目されることになったのか?

 その理由はいろいろあるのだろうが、もっとも大きかったのはやはり、

 “恋愛対象は、陰キャのオタクたちだけ”

 という尖りまくった世界観であろう。右を見ても左を見ても、主人公のまわりにいるのは陰キャのオタクだけ……! よくある恋愛ゲームにはまず存在しない(いてもモブ止まり)“陰の者たち”に、なぜじょせふさんはスポットを当てようと思ったのだろうか?

 インディーゲームとしては異例のヒットとなり、とくに女性ファンに激しく支持されている『陰キャラブコメ』の成り立ちについて話を聞いたぞ。

(聞き手、テキスト:大塚角満)

「陰キャだって、ひとりの人間なんだ!」

――インディーゲームジャーナルの、記念すべきインタビュー第1号が『陰キャラブコメ』を作られた“じょせふ”さんです。お受けいただき、ありがとうございます!

じょせふ いえいえ! どうぞよろしくお願いいたします。

――『陰キャラブコメ』、僕も遊ばせてもらいましたけど、めちゃくちゃテーマがおもしろいんですよね。ありがちな美女やイケメンにスポットを当てるのではなく、日陰の存在に見られがちな“陰キャ”が中心のゲームと言う……。

じょせふ はい、そうですね。

――いったい、この着想はどこから?

――はい。

じょせふ 大学でゲーム系のサークルに入っていたこともあって、いわゆる“オタク”と呼ばれる人たちの生態とか、特徴的なSNSの言動にすごく惹かれていました。でもSNSで見える部分って表面的なものだけで、じつは彼らの内面にこそ“陰キャ”の本質があるのでは……と考え始めるんです。そこで、ただ考えるだけじゃなく、何らかの作品を介して彼らのことを深掘りしていくとおもしろいかも……と思ったわけです。でも、既存の商業作品だと陰キャにスポットが当てられることはほとんどないですし、それをテーマにした作品だとしてもすごく……除菌されている気がしたんです。

――除菌!! いやあ、じつにいい表現ですね。

じょせふ 表に出せるように、消毒されているんですよね。

――なるほど。小奇麗に表現されていると。

じょせふ そうです! SNSで見られるような、彼らのねっとりとした言動はなかなか作品で表現しきれていないと感じました。それが、『陰キャラブコメ』に至る第1歩だったかもしれません。

――へぇ~~~!

じょせふ あと、陰キャの生態ってどうしても、露悪的というか言動を揶揄されがちというか……ちょっとからかう感じで表現されることが多いじゃないですか。そういうのを見るたびに、「軽薄すぎるんじゃないかな…?」って感じで納得できなかったのも大きいです。何かを作るなら……大好きな陰キャを詰め込んで作るなら、「私自身が、自分の考える最強の陰キャたちに出会いたい!」と思って、『陰キャラブコメ』を制作することに決めたんです。

――そう考えると、主人公の“会長”のモデルはじょせふさんご自身で?

じょせふ そうですね。けっこう近いところはあるかなと思います。ただ私は、会長ほど正義を貫いたり、誠意を持った接し方ができるわけではないので、“共感はできるけど違う人”なんだと思います。私にはない“まぶしい部分”を盛り込むことを、ずっと意識していました。

――おもしろいな~。いまおっしゃられた通り、陰キャ……つまり僕も含めたオタクの人たちって揶揄の対象として見られがちですよね。それはもう、世間一般のふつうの人から見て。

じょせふ はい、そうですね。

――それに対して「好きだから」という視点でコンテンツにまで昇華させる……という活力は、本当にすばらしいと思います。

じょせふ ありがとうございます。陰キャっておそらく、ごくふつうの方から見て、いろんな意味で遠い存在だからこそ揶揄の対象になってしまうと思うんです。自分が理解できないモノだからバカにしてもいいんだという考え方……土壌みたいなものは、少なからずありますから。でも、陰キャだってひとりの人間ですし、熱い心も持っているんです。その発露の仕方が、ちょっと特殊なだけで、喜怒哀楽のあるひとりの人間として理解したいし、寄り添いたいな思ったからこそ、誠意をもって『陰キャラブコメ』というゲームにまとめたいと思いました。

――『陰キャラブコメ』をエンディングまでプレイしたので、いまおっしゃったことの意味がよくわかります。このゲーム、陰キャに対する確固としたリスペクトがあるんですよね。

じょせふ ありがとうございます!

――ジャンルで言うと、サウンドノベルもしくはインタラクティブノベルとでもなりますかね?

じょせふ そうですね~……! ゲームの敷居はなるべく下げたいと思ったので、「ちょっと変わった文章が並んでいるけど、どんなゲームなんだろう?」……って程度の興味でいいから、たくさんの人に見てほしいなと思いました。でも“ノベルゲーム”って、文章を読むのが好きな人がプレイして、考察に考察を重ねて深掘りしていく……という、敷居が高いイメージがジャンル自体に付いていると感じるんです。その敷居自体を、私は下げたいと考えました。テキスト自体はたくさんありますけど、ちょっとおちゃらけていて読みやすいから肩ひじ張らずに遊べますよ……と主張しながら。ですので「このゲームのジャンルは?」と問われると、考え込んじゃうんです。

――なるほど。

じょせふ なんだろう……“おちゃらけた文章の集合体”ですかね。実際、開始3秒でふざけた世界観であることを伝えようと思って、“シャカパチ”(※トレーディングカードゲーマーがくり出す、カードをシャカシャカパチパチと手札を入れ替えたり弾いたりする技)のシーンを入れたり(笑)。ノベルゲームであることは間違いないですけど、「なんてバカバカしいんだろう」とも思ってもらいたいので、既存のジャンルにハメるのは難しいかもしれませんね。

――見た目やシステムはクラシックなノベルゲームのそれを踏襲していますけど、実際に遊んでみるとちょっと違うんだよなー。なんとも不思議な雰囲気で。

じょせふ 作った本人も、よくわかってないですからね(笑)。一応、恋愛がキーワードのひとつなので“恋愛風ノベル”とは明記しているんですけど、もっと砕けた言い方を考えたほうがいいかもしれないです。

――でも、プレイし始めてすぐに、「これを作った人は、そうとう書ける人だぞ」と思いました。

じょせふ ありがとうございます! でも私、活字の本が本当に苦手で、それこそ2、3ヵ月前までまったく読めなかったんです。逆に、(自分は何なら読めるんだろう……)って思って考えたときに、おちゃらけて砕けた文章だったらいけるな……って気づきました。以前から“クソゲーまとめwiki”をずっと読んでいたんですけど、ゲームをプレイしていて出てくる「ん!?」と引っ掛かる部分について、あの手この手のユーモアな表現を用いて笑いに昇華させているんです。このスタンスの文章だと、活字が苦手な私にもスッと入ってきました。ですので私の文章の源泉はクソゲーまとめwikiかもしれません。『陰キャラブコメ』に出てくる、陰キャの動作に対するツッコミとかも、そこが源なんでしょうね。

攻略対象①炎上系信者? つがい(番井孝人)

――“だいだい”(大橋大河)君が、オタク語の長文を随所で炸裂させていますけど、あれは何かを参考に?

じょせふ 私、SNSをじっくりチェックする時間を大事にしているんですね。そこでは、オタクな人たちがこだわりのジャンルに対してあーだこーだと語りまくっているわけです。それは屁理屈だったり、文句だったり、ときには悪趣味なツッコミだったりするわけですけど、それらをパッチワークみたいに繋ぎ合わせて、だいだい君のセリフに反映させたりしていますね。

――おもしろい表現に出会ったら、メモを取ったり?

じょせふ ときにはしますけど、そうしなくても事あるごとに、思い出しちゃうんです。何らかのテキストを書かなきゃいけないときに、(そういえば、こんなことを言っているオタクがいたなぁ~~~)みたいな感じで。

――それ、すごくわかるんだよな~。僕もファミ通時代からずっと、クスっと笑えるあるあるネタを盛り込んだゲームのプレイ日記とか書いてきたんですけど、ネットの掲示板とかSNSでたまに見かける天才的な返しとかは脳にこびりついていて、文章を書くときに思い出しますもん。

じょせふ わかります! 私も、名作コピペとかめちゃくちゃ好きで、忘れられないタイプです。そういったものが脳の引き出しに入っていて、無意識に使っているかもしれませんね。

――うんうん。

じょせふ そういったオタクの叫びみたいなものって、ときに寂しさをたたえていたりするんですよね。彼らの心の奥底にある寂寥感みたいなものが表現されている気がして、ついつい追ってしまいます。文字という媒体だけどその奥にはしっかりと誰かがいて、何らかの発露になっているんだろうなぁ……って、バックグラウンドを考えたりするのも好きなので。

――でも、いわゆるサウンドノベルと考えると、『陰キャラブコメ』は選択肢がすごく少ないですよね。

じょせふ そうですね。ひとつには、“制作がたいへんだから”という単純な理由があります。というのも私、『陰キャラブコメ』が初めて完成させることができたゲームなんです。

――あ、そうなんですね。

じょせふ はい。壮大な構想とか世界観があったとしても、完成せずに日の目を見せることができなかったら、それはとても虚しいことだと思うんですね。なので私は『陰キャラブコメ』に関しては、まず“完成させること”を第一に考えました。ですので、可能な限り分岐を少なくした、と。

――はい。

じょせふ あとは結果的になんですけど、主人公の会長さんが、基本的に迷うことのない、自分の信じた道を突き進める人になりました。ですので選択肢が出るシーンはある種劇的な、本当に悩むシーンにだけ限定することができたんです。この、制作の都合と会長さんの性格がうまく嚙み合って、こういったゲームデザインになったのかなと思っています。

――制作者にも優しい、とてもいいキャラなんですね。

じょせふ はい、そうなりますね(笑)。

――わかりました! ではもうちょっと突っ込みたいんですけど、『陰キャラブコメ』って何を目標に作られたのかな、って考えたんです。「陰キャに愛を」とか「オタクに光を」といった、じつは崇高な目的があってのではないか……と。

じょせふ そういった気持ちもあるんですけど、大前提として“上から目線には絶対になりたくない”と思っていました。陰キャを愛したい、解放したい……という想いは作品を通してプレイヤーが結果的に感じ取ることであって、私のほうから「陰キャを愛せよ!」とか言ったり、強く願って作ってしまうと、作品に現れちゃうと考えたんです。

――押しつけがましくなってしまうと。

じょせふ そうですそうです。好きなモノでも、無理矢理食べさせられたらイヤじゃないですか。ですので私が意識していたことは、「陰キャをおいしく食べるから、見てて!」って感じでしょうか。そういう意味では、『陰キャラブコメ』は食レポに近いゲームなのかなと思います。

――それまた、おもしろい切り口だなーーー!

じょせふ 食レポって、「口の中で弾ける感じがたまらない」とか言うじゃないですか。それを、陰キャの仕草ひとつひとつに置き換えて、事細かにお伝えしている感じです。食レポって見ていると、「あ、おいしそうかも」ってつられてしまいますけど、陰キャもそうなってくれるといいな……って考えながら作っていました。なのでまとめると、“陰キャの魅力をいちばん上手に伝えるにはどうすればいいか?”を考えた結果、食レポ方式に行きついた……ってところでしょうか。

攻略対象②唾飛ばしオタク だいだい(大橋大河)

――わかりました! では、実際の制作環境について聞かせてください。ゲームって、いろいろな部品の集まりじゃないですか。シナリオ、グラフィック、プログラム、音楽……とかとか。『陰キャラブコメ』は、どんな感じで作られたのでしょうか?

じょせふ シナリオ、脚本、プログラムは、私ひとりで作っています。音楽に関してはフリーで使えるものを活用しつつ……先ほどのシャカパチ音を録り下ろすというのがこだわりのひとつだったのですが、これは私が入っていたゲームサークルの知り合いにお願いして、渾身のシャカパチをやってもらっています。

――すでにおもしろい(笑)。

じょせふ あと、背景写真も自分で撮ったり、サークルの人に協力してもらったり……。というのも当初は、完成したら内輪の人間に見せられればいいや……って感じで始めて、進捗もSNSの鍵垢で上げながら、身内でワイワイと作っていました。でもイラストだけは、“mynd3”先生という、私の高校時代の同級生なんですけど、イラストがすごく上手な子がいたので、「私が何かを作るときは、ぜひ協力してね!」って話していたことを思い出して(笑)。『陰キャラブコメ』は綺麗な絵でプレイしてほしいと思ったので、mynd3先生にお願いすることにしました。

――へ~~~!! では、制作期間はどれくらいに?

じょせふ 1年半……くらいでしょうか。でも、サボっているときのほうが多かったと思いますけど(苦笑)。ひとりですし、締切もなかったので、どうしても甘えちゃって……。なのである程度制作が進んできたら、あえて公式アカウントを作って逃げ場を潰しました。アカウントを作ってからの最初のツイートで、「『陰キャラブコメ』というゲームを作っています! ●月にリリースする予定です!」と公にしたんですね。これ、すごく大事なことで、自分を追い込んだおかげで制作はかなりスピードアップしたと感じています。

――わかるーーー! 締切が設定されて初めて動き出せる……っていうの、人間の本能に根付いていると思いますもん。僕も記者とかモノ書きをやっていますけど、締切があるからこそなんとかなっている……って、毎日のように実感しています。

じょせふ ですよね! じつはいま新しいエピソードを書いているんですけど、それも期限があるんです。でもだからこそ、私にしてみたら信じられないくらいコツコツと進められています!! 「私もやればできるんだ!!」って感動しているので、締切とかまわりの目があるって、クリエイターにはすごく重要なことなんだなと確信しました。

――そうやってほぼひとりで作られているわけですけど、何がいちばんたいへんですか? シナリオ? プログラム?

じょせふ 『陰キャラブコメ』だと、やっぱりシナリオですかね……。書き出しはすんなりと入れても、中盤の何気ない件(くだり)をどう展開させて核心に繋げていくのか……と考えるのがたいへんでした。あとは……やっぱり、納得のいく結末を導き出すのが難しかった……!

――はいはい!!

じょせふ 私、結末を考えずに書き出しちゃうんです。なので書いている途中で、「こういうオチにしようかな」とか「こんな展開はどうだろう?」なんて、ワチャワチャと出てきてしまって……。笑いどころについてもいっしょで……ゲーム中に“陽キャ警報”というのが出るじゃないですか?

――『陰キャラブコメ』を象徴するような、ドタバタシーンのひとつですね。

じょせふ じつはこれもリリースする直前に思いついて、突貫で画像を作って入れ込んだものなんです(苦笑)。けっこう見切り発車で作り始めて、思いついたことをどんどん肉付けしていく感じでした。そういう意味でも、シナリオがもっともたいへんだったし、不安が付きまとっていたと思います。やっぱり、私自身もおもしろいものしか読みたくないので、必然的に自分を楽しませるハードルが上がっていっちゃうんですね。言ってしまえば、“自分を満足させるためのシナリオ作りがたいへんだった”ということになるんだと思います。

――僕もゲームのシナリオライターをやっていますけど、説明台詞が長いだけで台無しになるし、どのシーンを切り取ってもユーザーに「お!?」って感じてもらいたいので、どんどん自分へのハードルが高くなる……。難しい仕事ですよねえ。

じょせふ おっしゃる通りで、本当に難しいです!!

――そんな『陰キャラブコメ』は、最初は個人でBOOTHにて販売、その後iOS版の発売を皮切りにいまでは株式会社Phoenixxといっしょに展開されているわけですけど、Phoenixxから声を掛けられたとき、率直にどう思われましたか?

じょせふ 本当にありがたかったです。見つけていただいて。作品が評価されているなら、もっとゲームを広げていく活動をしたい……と考えてはいたんですけど、やっぱりひとりだと、グッズを売るのも、いろいろなメーカーさんとやり取りをするのもキツイな、って……。そんなときにPhoenixxさんから声を掛けていただいたので、すごくタイミングがよかったんです。“ゲームの幅を広げてくれる人たち”と“環境”に出会うことができて、心から運が良かったなと思いました。

――そんなじょせふさんは、そもそもどうしてゲームを作ろうと?

じょせふ ゲームは、小学生のころから作っていました。『RPGツクール2000』とか、簡易的なプログラミング言語の“Hot Soup Processor(ホットスーププロセッサー)”を使って、完成させることはできなかったんですけど、ゲーム制作には親しんでいたんです。でも、「ゲームクリエイターになろう!」と特別に意気込んでいたわけではなく、創作活動の選択肢として身近にあったので触っていた……という感じでしょうか。

――パソコンもそんな感じで?

じょせふ あ、そうですね! 父親がIT系の人なので、そのころから触らせてもらっていました。

――しかし、小学生のころからゲーム開発を……ってところに時代を感じつつも、やはりモノ作りには興味があったんですね。

じょせふ そうですね! 物語を作るのが本当に好きで、小学2、3年生のころからブログで小説を連載していました。……まあ、それもぜんぜん完結しなかったんですけど、いちいち登場人物の設定を作って、いくつもの物語を書いていた記憶があります。文章を書くことも、当時から好きでしたね。

――そういうことを好きになれる時点で、才能なんだと思いますよ。でも、そのときに完結させることができなかったという事実が、「『陰キャラブコメ』は完成させたい!」という想いに繋がったのではないですか?

じょせふ おっしゃる通りで、それこそが根源ですね!

攻略対象③ 民度最悪格ゲーマー ash(本名不明)

――でも、子どものころからゲームクリエイターになるのが夢だったんだろうな……って、勝手に思っていました。

じょせふ 当時は、あくまでも創作の選択肢のひとつ……というか、表現方法のひとつだったんですよねー。でもその後、大学を卒業してからも創作活動は何らかの形で続けたいなと思って、就職後も上手にサボりながらゲーム制作を続けています(笑)。

――創作活動という意味では、小説家も候補のひとつになり得たのでは?

じょせふ そうですね。ただ、文章を書くのは好きなんですけどめちゃくちゃな長文は得意じゃなくて、『陰キャラブコメ』くらいが自分のできるMAXサイズだなと思いました。ですので、短編でも長編でも作品にしやすいノベルゲームは、私みたいな人間にはすごく合っている表現手段だったんです。立ち絵とそれなりの文章があれば、一挙手一投足までテキストで説明しなくても伝わるので、ノベルゲームはすごい媒体だと感じました。

――モノ書きのひとりとして、じょせふさんのお話はいちいち目から鱗な感じです。そういう手段もあったんだなーーー!

じょせふ ありがとうございます(笑)。ノベルゲームだと、いろいろな形で笑いを取れるじゃないですか。細かな描写までテキストで行わなくても、画像と、ちょっとふざけた文章があれば相乗効果で笑いに繋がりますし。私は、そういう表現をひとつでも多く入れてプレイヤーにクスりと笑ってほしいと思っているので、緻密な情景描写はそんなに必要ないんです。そういった想いにも応えてくれるので、おもしろいですよ。ノベルゲームは。

――では、今後も作るのはノベルゲームに?

じょせふ そうですね。自分との相性もかなりいいなと思っているので。ただ、可能性を狭めたくはないので、「ノベルゲームしか作らない」と断言したくはないですけど。自分との親和性が高いと確信はしているので、良い選択肢のひとつとして、ずっとそばにいてほしいなと思っています。

――でも、じょせふさんが世界観が作れてシナリオも書けて、それをノベルゲームにまとめられる……ということが広まっていくと、さまざまなお声掛けをされるかもしれませんよ?

じょせふ そうですねー! でも、いままでいただいた仕事は片っ端からやらせてもらっているんです。人前でしゃべったことなんてないのに、トークライブとかラジオの仕事まで飛びつきましたし(笑)。

――前向きですばらしいなーーー!

じょせふ やってみたら(これ、苦手かも……)って思うこともあるんですけど、すべて経験ですからね! 失敗も含めて作品に活かせますし、それが新しい表現に繋がるかもしれないし。じつは昨日もPhoenixxの梶さん(※じょせふさんのマネージャーを務める女性)に言って、〇〇〇〇〇の取材(※今後のネタバレを考えて自主規制)に連れていってもらいました。これがめちゃくちゃ難しかったんですけど、この“難しいとわかった”ということも、貴重な経験じゃないですか。

――わかる! 実体験をしたからこそ、作品の中で生きるんですよね。

じょせふ そうですそうです!!

――では、いまはインプットを増やしている時期でもあるんですね。

じょせふ はい。とにかくインプットは増やしたいです! でも、さまざまな作品を同時に追い掛ける……ということが得意ではないので、ひとつひとつの体験を大切にしていきたいです。

攻略対象④ オタサーに陽キャ? にしむら(西村 陽日)

――そうやって完成した『陰キャラブコメ』が、実際に女性ファンを中心に大いにウケています。この現状を、どうご覧になっていますか?

じょせふ そうですね……、キャラの造りと性格、深掘りの仕方を、会長さんにめざとく気づいていただき、そこを評価いただけたのかなと思いました。

――うんうん。

じょせふ キャラデザにもこだわりましたし、ひとりひとりの心の動き方も、可能な限りプレイヤーが共感できるように作ったつもりです。たとえば“人に笑われることが怖い”とか、共感しやすい部分をしっかりと深掘りして、外面だけじゃなく、内面も響くように作り込んでいったんです。その結果、泣いたり笑ったりをいっしょにできるキャラたちになったかな、と。

――なるほど~~~!!

じょせふ キャラが身に着けている服とか装飾品も、「こういう性格だから、こういうのを着るよね」と分析して、こだわりまくって作りました。あと……自分の好きなものをデザインに反映させることは、徹底したと思ったんです。陰キャ好きな私が「いい!」と思えたものならば、プレイを進めていくうちにいつかきっと、「あれ? 最初は微妙だったけど……この子、いいかも?」って思ってもらえるんじゃないかなと信じて。

――あ! だいだい君が着ているTシャツを見て、「こういうの着てる子、いるわ~!」ってめっちゃ思いました!

じょせふ あ、うれしい! でもいま、絶滅危惧種なんですよああいうTシャツ! ぜんぜん売っていないみたいで、ファンの方もよく「だいだい君のTシャツ探しているのに、ぜんぜん売ってない!!」ってSNSでつぶやいたりしています(笑)。

――そうだったのか……! 知らなかった……!

じょせふ いま2000年代ファッションのブームが再燃していているらしく、だいだい君が着ているみたいな大きなローマ字のシャツが人気っぽくて。「ヤバい! だいだい君がオシャレのトレードマークになっちゃうかも!?」って、1周回って思いました(笑)。

――あはは! 確かに! ファッションのトレンドは巡るからなあ。でもだいだい君もそうですけど、メインキャラたちの見た目、性格が見事に差別化されているんですよね。誰を見ても、「あ! いるいる! こういうヤツ!」って思いますもん。

じょせふ ありがとうございます! でも私からすると、彼らは共通点もすごく多いので、(ちゃんと差別化できてるのだろうか……?)って、作りながら不安に思っていました。

――これは興味深い。

じょせふ たとえば“ash”さんと“にしむら”君。ashさんは“男らしさを全うできているか”と“人に笑われないか”ってところに恐怖心を持っていますけど、にしむら君も「人に笑われるのが怖い」と思っています。誰に笑われるのが怖いのか……というディテールは違いますけど、“笑われることに怯えている”、“自我がちょっと不安定”みたいなところをクローズアップすると、けっこう共通した不安を抱えているんだな……って思いました。ですので差別化できているとしたら、意識して「ここは違うよね」と信じながら書いた成果なのかなと感じます。

――では、3月に吉祥寺でTOKYO INDIE GAMES SUMMITが開催されて、『陰キャラブコメ』のグッズ販売が行われたじゃないですか? 僕もその様子を見に行きましたけど、女性ファンが大行列を作っていて驚いたんです。

じょせふ そうなんですよーーー! ありがたいですね。正直、私もビックリしました。

Phoenixx梶 スタッフもわかっていなかったです。「これ、違うイベントの行列だよね?」って……。

吉祥寺PARCOにて開催されたポップアップストア

――いやでも、それくらいの光景でしたよ、あの行列は。

じょせふ 自分ひとりだと絶対にここまでのコンテンツにはできていないので、本当にありがたいですし、感動しました。

――こういう記事が出ると、もっと広がっていくと思いますよ。

じょせふ そうですよねー! 私もSNSを使って発信するようにしていますけど、本当にひとりだとやれることが限られてしまうんです。こうやって記事にしてもらうと拡散力が違いますし、たいへんありがたく思っております。

――さっきの〇〇〇〇〇の取材もそうですけど、このインディーゲームジャーナルでは大手メディアが追い掛けないようなニッチなネタも記事にしていくつもりなので、何かおもしろいことをやられるときは、ぜひお声掛けください!

じょせふ ありがとうございます!!

――では、こんな感じでまとめさせていただきます! 本日は本当にありがとうございましたー!

ボイス・新スチル/シナリオを追加した『陰キャラブコメ DX版?』がNintendo Switch/Steamにてリリース決定!今後も陰キャたちから目が離せない!
  • 商品名 陰キャラブコメ
  • 開発 じょせふ
  • 販売 じょせふ電産
  • 対応デバイス Windows、macOS、Linux、iOS
  • 配信元 BOOTH、App Store、Google Play
  • 配信日 2022年10月23日(PC版)
  • 定価 PC版:400円、iOS/Android:500円

▽ダウンロードはこちら

<PC版>

https://joseff0414.booth.pm/items/4210896

<iOS版>

https://apps.apple.com/jp/app/%E9%99%B0%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%A9%E3%83%96%E3%82%B3%E3%83%A1/id6474230585

<Android版>

https://play.google.com/store/apps/details?id=in.love&hl=ja&pli=1

https://apps.apple.com/jp/app/%E9%99%B0%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%A9%E3%83%96%E3%82%B3%E3%83%A1/id6474230585

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